黒石寺で年配のライダーに話しかけられた。上下とも見るからにアメリカンライダーという黒革で、いい感じだった。
気仙沼からきました。みんな寒いって今日は一人です。」

僕はトイレ休憩にこの黒石寺に寄った。トイレの出入りですれ違い、僕はフルフェイスのヘルメットをかぶったまま、彼はハーフヘルメット。見るからにライダーであったからバイクを確かめるも無くわかった。

僕が用を済ませてトイレを出ると、彼はトイレの前に乱雑に止めた僕のバイクを見ていた。
「新しいシリーズのKですね?」
にこっとこちらを確認してそう話す。
「ええそうです。出てから2年になりますが。」

 そこから今日のルートについてお互いに少しだけ話す。
気仙沼から須川近くのところでみんなと毎年記念撮影をしているのだけど今年は一人です。みんな年取って寒いのがいやみたいだ。」
「私はカメラが趣味でそれからバイクで移動するようになったんですよ。」

 僕は八幡平市に住んでいて、隣の正法寺を見に行く途中でどうしてもトイレが我慢できずに寄りましたと話す。
「このバイクも重いでしょ?私のも重いんですよ。ただ、足つきがいいのでその点は助かってます。」
 彼は後ろを振り返り道路向こうをみて話す。そこに止めてあったバイクが彼のなのだろう。ただ僕にはどのメーカーのものかはわからなかった。

「起こすのが結構大変になってきてね。わたしもそろそろかなぁと思っているんです。」
話す言葉の力強さからはまだまだ乗れそうな感じなのだがその言葉を話し終わったとたん、彼の表情が少しさびしげになった。返答に困り、まだ大丈夫そうですけどとか、僕の記憶にも記憶に残らないような言葉をかけたに違いない。

 会話は10分にもなら無かっただろう。もう少し話をしたかったみたいな彼と別れ僕は正法寺に向かう。


 かやぶきを葺きなおした正法寺は見事だった。まだ庭の工事が完全ではない感じだが、惣門をくぐってドンとした本堂が見えた。見事だった。すこし庭を歩き、庫裡に飾られたものをみてから通路を伝って本堂に。内装は鉄筋を入れたぐらいであまり変わっていないのではないだろうか。

 帰りにシフトチェンジが異常に渋く、それが気になりオートセンター山口に行く。朝にもよって先日の後遺症修理のパーツを取りに行っていた。クラッチの握り感触は問題ないので、工場長にも確認してもらったがやはり異常ではないねという。なにかトラブル情報があるかもしれないから聞いて見ますということだったのでそのままそこを去った。

 小岩井を抜けていっても良かったのだが、暗くなる前に家に帰る為にそそくさとつまらない国道・県道を走る。途中ST北校による。大型の免許の金額とかを聞きに。思ったより普通車優遇があるようだ。趣味で大型二輪を一気に取るよりは安い。9ヶ月間のうち、残されたのは6ヶ月。がんばれるだろうか。中型・大型と免許制度が変更になる前にと思うのだが・・・。

 そこから玉山方向に。支所前食堂に入る。いつもなら鍋は2人前なのだがちょっと遠慮。一人前にご飯普通盛り。このにおい、味がなんともいい。3時過ぎだというのに客は一杯だった。水曜日定休で19時まで営業。オーダーストップは18時。
 鍋の火加減を気にしながら一味唐辛子を多めにかけて食べる。多めというのは僕にしては普通なのだが、みなよりは多いらしい。
 食べながら寺であった先輩ライダーの言葉がよみがえる。僕はいくつまでバイクに乗って、楽しんでいられるだろうか。


 大根と長ネギを積んだ軽トラを何台も見て、軒先に干し柿と大根が干されているのみて、いつもの11月じゃないかと安心した。