久しぶりにそれほど遅くない時間に家に帰りついた。
外の空気はなんとなく暖かかった。
遠くで時々雷が光っているようだったが音は聞こえなかった。
倉庫のシャッターを開け、電灯をつけると
996が光って見えた。
「今日は乗れるぜ!ちょっとでいいからさぁ。」
となれなれしく話し掛けてきたようだった。
車を倉庫にしまい、996側のシャッターを開けて
いったん荷物などを置きに家にはいり、
そそくさと用意をしてヘルメットをかぶった。
996にまたがり後退しながら倉庫からだし
暖気運転をしながら空を見た。小雨が落ちてきていた。
じゃぁちょっとだけなと走り出す。
路面はだいぶ湿ってきていて
コーナーにある横断歩道の白線などはそれなりに滑った。

『あ、なんか、たのしい。』

久しぶりに自分の時間がもどってきたような気がした。
雨の中、暖冬とはいえ、それなりの気温。
暗い道を10kmほど走った。
寒さは不思議と感じなかった。

仕事におわれ、好きでもないのに会社に一日の3分の2近くいる。
すこし、気分転換でもどう?と気温が下がり弱りかけのバッテリーをおして
996が僕をいるべき世界に連れ戻してくれたのだろうか?