今朝、出掛けにふと「自爆事故に見えるように死ねるかな」ということを考えた。心に隙がある瞬間にわかるのだが、このごろ病的(病院に行くほどではない)ではないけれど鬱なのだ。不安神経症というのをわずらったことがあったので鬱と言うよりはそっちの方なのかもしれない。人がいきなり自殺を考えるというのはこんな感じなのかなとあとで思ったりした。
 台風が近づいて、朝から雨という昨晩の天気予報は少し良い方向に外れ、気温も高めで走り出すのにちょうど良い気温だった。996の暖気をかねてゆっくりと国道を南下、焼走りに登るところからはここ最近では一番アクティブに走った。さっきの「死ねるかな」がコーナーを抜けた直線でよみがえる。俺は内心で死に急いでいるのかと考えながら120km/h前後のスピードで直線を抜け、60km/h前後でタイトコーナーを抜けていった。タイヤの端まで使っているというわけではないが時折、後輪がズリッとというか、ぬるっとすべるような感触が伝わってきた。996も最後かもしれないからと思ってくれたのか、よく回り、俺の言うこと、希望をよく聞いてくれた。
 300mくらいの直線でアクセルを緩めた時だろうか「俺達、最後まであきらめないでいたんだ、そしたらこれだけ見事に色づくことが出来たんだぜ」と視野の両サイドを彩るツタや広葉樹がそう言っているように感じた。「自分で死のうと思うな、できる限り生きろ」と。胡散臭いというか変な話だが、本当に頭をよぎったのだった。なぜか急に涙が出始めて、しかもそれを自分では抑えることが出来ず、ヘルメットの中でただただないていた。曇り空ながらも山頂まで稜線を見せてくれた岩手山、冬が近いのにまだ青い牧草地、一つ一つそれぞれが自分を暖かくそして強く励ましてくれているように感じたのだった。涙で滲んで前があまりよく見えないのでスピードも法定速度に落ちた。どうしたんだろう。こんなことは今まで感じたことも考えたこともない。
 俺はできればバイクに乗って死にたくはないと強く思った。そして俺が正直に気が許せるのはバイクと岩手の自然だけなのかもしれないと少し寂しく感じたりもした。
 泣いたからだろうか、会社ではすがすがしく堂々と仕事が出来たように思う。心の奥底からすっきりしたような気もした。