仕事は忙しいというかなんというか。頭は少なくとも休まる時間は無かった。手も動かさないといけないし、かといって新たな製法を考え付くことも出来ない。でも、終わらせないといけないという状態だった。なので、パソコンとかなりの時間向かい合った。でも仕事は思ったより早く終わって、バドミントンに行って、適度に運動をして、スーパーに寄る。でもなんとなくラーメンがさっと食べたくなり、それを夕飯にしようと大して美味しくも無いラーメン屋に行った。
座席数が少ないわけではないがテーブル席はバラバラに埋まっていて、5席あるカウンターが3つ空いているだけだった。僕はその真ん中に座り、人と距離を置いた。その奥は化粧臭いおばあさんが二人隣り合って座っていた。におって来たので一番はしに座りなおした。
ラーメンを注文してすぐにまた一人入ってきた。からだの大きな45才前後の鳶装束を着た男だった。からだもがっしりして大きいのだが、首が太いのがすごく印象的だった。「汗臭くてわるいな」といって俺の隣に座った。確かにその服装だとおばさんたちの隣は避けるだろうなぁと思った。セルフサービスの水を汲んで戻ってきた男はラーメンを半ライスを頼んだ。
鳶装束に興味があったのでチラッと見たりした。大きなからだなのに背中を丸めてイスに座っているのがちょっと申し訳ないような気もした。ハイネックの俺も使うようなワークマンで売っている緑色のシャツに寅壱ではない薄紫色の超超超ロング。ベルトも僕が使っているようなもの。足元は雪駄かなぁ?と見てみると地下足袋だった。腿の部分は土ぼこりで汚れていて、鳶というよりは土工というかんじ。確かに体格もそんな感じだ。スポーツ刈りが伸びたような髪形に四角い頭顔。水の入ったコップを持つ手の指は太く手は大きいが指は長くない感じ。ちらちら何か探している様子。「便所ってどこかあるのか?」というので奥行って左にあると教えた。どうも、といってそっちに行った。動くときなるほどと汗臭い匂いがした。
昔、学生のころ夏にバイトをして昼休みなどにお互いに漂わせていた匂いだった。あのころ昼休みに店に入っても汗臭くてわるいなとかって周りに配慮はしなかったなぁとおもった。
先に出てきた俺のラーメンにちょっとニンニクを入れているところで男は戻ってきた。カウンターの食器置き場のガラスに映っている男をみると腿のところで手を拭いている。俺はラーメンをすすり始めると男のラーメンとライスもきた。胡椒をかけて、ご飯に少し塩をふって食べていた。大きなてであるがやわらかく動いているように見えた。箸もちゃんともっていた。
食べ終わったとき話しかけられた。おれ、○○さん(俺の苗字)ちの庭、工事したんですよ。あ、そうなんですかと答えてしばらく立ち話。あの時、どっちが土方だかわかりませんねと話したなとか言われた。だんだん思い出してきた。(笑)隣の工事のとき、倉庫の中で休ませてもらって感謝しましたと。そう話すと男は急に俺を確認できたためか、ニコニコし始め、僕の肩を何度かもんでまたよろしくお願いしますと。ああ、そういえばスケベ話をしたっけねと。あの時は髪の毛がお互いスキンだったが、伸びていて気が付かなかった(笑)ああいう、無骨そうな体躯にかなりあこがれる。肉体労働もああいう体躯だったらそれほど苦ではないのではなどと勝手に考える。
家に帰ると、六尺褌が郵便で届いていた。いつ注文したのだろう?と記憶に無いがまあ、すぐ使うわけではないのでそのまま褌置き場の下のほうに重ねておいた。これから蒸し暑くなると出番ですね。