現場の年配のこの春、定年を迎える人が僕のところにやってきた。RO膜でバイオフィルムのようなものが発生し、性能が著しく低下した。この問題を解決する術はいくつか考えられたが、再生できるものではないらしい。それについて参考になるかもしれない記事を見せにやってきた。それは超臨界流体を利用したものであってなかなかすぐに取り込むことが設備的に出来ないが、そういう風に会社の問題について解決策を求められずとも提示してくれる姿勢がすごくうれしかった。そういう風土が無い会社だから上司は間違っているかどうかを常に評価されず、同じ考えのある人ばかりが中軸に置かれ、人が変わってもまったくいい方向に向かないのだ。

 うちの技術要員は我らが一番工場で物を知っていると思っているようで、現場の人たちの観察眼などを軽んじている気が以前からしていた。良く現場に行ってみて来いという奴ほど、直接の声を結果的にあまり聞かない、聞いていない。たぶん、だから現場と仕事で直接関係にない僕のところに来てそういった内容を提示したのでは無いかなぁとおもった。時々雑談をしに現場に行って苦労話とか愚痴を結果的に聞いてきている。話しやすかったのではないだろうか。

 なによりも、その新聞のスクラップに対しての記憶がすごいと思った。日経でいう私の履歴書みたいなものを切り取って貼っていたり、仕事にもしかしたら結びつくかもしれないというものを取って置いているらしい。その記事を覚えているというのもすごい。なかなか実直な人で無いと出来ないだろうなぁとおもった。こういう人が現場の精度を上げているのだと思うと同時に、いま、クレームが多いのはそういう製造での「しつけ」の出来た人を評価していないところにあるのではないかと思う。大きな組織体では軍曹は常に必要とされる。